BURKINA FASO OPERA PROJECT

Là-bas ou ici...


概要


制作進行中の学際的プロジェクト·オペラ「LÀ-BAS OU ICI…」は、西アフリカ·ブルキナファソで、作曲家·藤家溪子が制作しているフランス語と他のいくつかの現地語によるオペラです。 2019年に開始されたこのプロジェクトは、多様な文化、言語、芸術形式を組み合わせて、包括的でオープンな芸術作品を実現しようとしています。 タイトルは、このオペラの台本に、原作を提供したコンゴ人Moyi Mbourangonが、フランス語で書いた小説「中絶された未来の夜明け…」 から借りたものです。 画像撮影はフランス人アーティスト、Hervé Humbertによるものです。 藤家溪子率いる制作チームに、今後、役者/ダンサーが加わろうとしています。 

 藤家溪子は国際的な作曲家であり、すでにいくつかのオペラを発表しています。 このプロジェクトでは、彼女の経験と西洋のクラシック音楽、および伝統的な東アジアの音楽に関する深い知識が、西アフリカの音楽及びその精神と対話し、渾然と一体化しています。

 楽譜の存在がなく、口承伝承で音楽を伝えてきたアフリカの伝統音楽継承者たちとのオペラ制作には、丁寧なコミュニケーションと、じゅうぶんな時間をかけることが不可欠であるため、オペラ全4幕の完成と公演は2023年を予定しています。

 すでに現地(ブルキナファソ)のGoethe Institutで、最初の部分公演が2020年12月に行われており、2021年4月にはInstitut Françaisで第1幕の公演が行われます。

 全4幕完成後は、アフリカ諸国、フランス、ドイツ、そして日本での公演を目指しています。

 

音楽: Keiko Fujiie 

台本: Moyi MBOURANGON 

演奏: Keiko Fujiie, Maboudou Sanou, Ibrahim Dembélé, Boureima Sanou 

舞台美術: Hervé Humbert  

 

 




作曲家コメント 藤家溪子


2011年にフランス·コンゴ研究所が主催したライティング·コンペティション「Dis-moidixmots」で1位を獲得したMoyi MBOURANGONはラッパーとして長年活躍してきました。それに飽き足らず、新たな表現領域を模索して、初の長編小説に着手しました。私はその小説をもとに、オペラを制作しています。

 Moyiは常に自身の母語-リンガラ語で考え、そしてフランス語で執筆します。

 アフリカのフランス語圏では様々の現地語が活発に話され、ほとんどの人々は、バイリンガルならぬマルティリンガルです。しかしながら、教育の普及はまだまだ十分ではなく、公用語であるフランス語を解さない人々も決して少なくはないのです。

 この特殊な言語環境において極めて敏感、かつ、意識的なMoyiの創作には非常に魅力があり、それをオペラ化することで以下の3点が期待されます。

1. アフリカ固有の言語感覚や思考プロセスがフランス語で表現され、フランス語に新しい地平が開かれること。

2. フランス語の原文がMoyiの母語·リンガラ以外のアフリカ言語に訳されるとき、アフリカの民族間の感覚、習慣の微妙な違いからヴァリアントが生み出されること。

3. それらがオペラの歌詞となったとき、言語を超えた音楽の表現と渾然一体し、私たちは意識の言語化という一種の軛から半ば開放され、意識本来の豊かさを取り戻す可能性があるということ。

 また、小説の内容そのものが、ヨーロッパや日本の人々の、アフリカ社会への興味と理解を刺激し、促進するに足る、Moyiの、いわば自伝的作品であることを付け加えさせていただきます。


プロジェクト沿革


2019年1月に、私はブルキナファソ出身の世界的な建築家Francis Kéréとドイツで出会い、オーストリアの演出家·Christoph SchringenziefがスタートさせたVillage d'Operaの話を聞きました。10年前に、アフリカ×西欧のガッツリとぶつかり合う形でのコラボレーションにより、今までにないあたらしいオペラを作ろうという夢を描いて、Ouagadougouからそう遠くない場所にComplex Siteが建設され、Village d'Operaと名付けられたのです。

 

しかし、着工まもなくShurigensziefは他界し、Siteの中心に建てる予定だったオペラハウスも全く建設の目処が立っていないようです。

 私はFrancisに、オペラハウス以前に、まずアフリカ人たちとのコラボレーションでオペラを1つでも完成させるのが先であり、アフリカの風土と音楽、そして文化全体に馴染んでいけるオペラ、それにはどんなハウスが必要なのかはそれらの経験の積み重ねの上で考えるのが妥当だと提案しました。ブルキナファソの気候でしたら屋外公演も可能です。

 Francisも心から賛成してくれ、また、ヨーロッパに限定せず、日本とのコラボレーションでオペラを制作することに、たいへん魅力を感じてくれています。私たちは、オペラ制作をFrancisの故郷、Gando村の、彼がコミュニティーの人々を総動員して作り上げた学校で行うことを計画しました。

 そんなわけで、2019年7月に初めてブルキナファソを訪れ、Gando村とその学校を見て、人々と交流を始めました。しかしながら、コロナの影響というだけではなく、私自身がアフリカの音楽と文化を学ぶ必要から、まず、Gando村ではなく首都Ouagadougouで伝統音楽継承者たち(griotと呼ばれる家族集団)とオペラ·プロジェクトを開始することにしました。

 現在3回目の訪問で、滞在は計1年2ヶ月になります。ようやく現地語(Moore)でコミュニケーションが出来るようになってきました。griotたちとのとのコラボレーションは順調に進んでおり、4月23日には現地のInstitut Françaisで新作オペラの第1幕を発表します。今までのところは自分のポケットマネーで彼らとのアルバム制作から小さなコンサートまで行ってきました。資金不足やコロナの影響の苦労もありますが、思う存分の時間をかけてアフリカの人々から学び、自分のほうからも新しい要素を提供し、ともに作り上げる喜びを共有しています。

 

 なんといっても世界最貧国のひとつに数えられる国ですので、最初のうちこそ人々の暮らしぶりの貧しさに驚きましたが、最近は慣れて来て、慎ましい家を建て、現地の人と変わらない暮らしをしながらのオペラ制作です。